GONE WITH THE WIND

1939年アメリカ映画 セルズニックプロ=MGM  カラー 231分

監督 ヴィクター・フレミング
出演 クラーク・ゲーブル ヴィヴィアン・リー レスリー・ハワード オリヴィア・デ・ハヴィランド トーマス・ミッチェル バーバラ・オニール ハッティ・マクダニエル

 

 

もう一切説明はいらないくらいあまりに有名な名画中の名画です。ブロ友のワンダさんが紹介していらしたので、私も紹介させて頂きます。アカデミー賞で、作品賞、主演女優賞、助演女優賞など沢山の賞を受賞しました。助演女優賞を受賞したマミー役のハッティ・マクダニエルは、黒人で初の受賞となりました。赤いペチコートが可愛かったですね。

 

南部の大プランテーションの娘スカーレット(ヴィヴィアン・リー)は、美しいけれど気位が高くわがまま。彼女は幼なじみのアシュレー(レスリー・ハワード)に恋をしていますが、アシュレーは従妹の冴えない娘メラニー(オリヴィア・デ・ハヴィランド)との婚約を発表。そして、スカーレットは野性的な男性レット・バトラー(クラーク・ゲーブル)と運命の出会いをします。遂に南北戦争が勃発。アトランタに出たスカーレットは、戦争の惨状を目の当たりに見て、レットに導かれてメラニーと必死の脱出をはかります。やっとたどり着いた懐かしい我が家タラ。でも、そこはすっかり変わり果てていました。スカーレットの生きるための必死の努力が始まります……。


スカーレット・オハラという女性は、映画が生んだ(小説がというべきかな?)希有なヒロインでしょう。原作では「スカーレット・オハラは美人というのではなかったが・・・」とありましたが、ヴィヴィアン・リーは文句なしの美人ですね。でも、まあ自意識過剰でわがままで、人の旦那も平気で誘惑するし、とても性格的には素敵な人とは言いかねますが。ただし、生きるか死ぬかという瀬戸際に立った時の強さは、舌を巻くほどです。畑に残った野菜をかじって「神様、私は負けません。2度と家族を飢えさせません!」と叫ぶところは圧巻。その後も、あらゆる手を使ってタラを復興させ、再びのし上がっていく。素晴らしいビジネスセンスも持っている人です。これも但し、巻き込まれる人は良い迷惑で、2番目の夫だったフランク・ケネディなんて、スカーレットの典型的な被害者なのですが。

このスカーレット選びの逸話はあまりに有名です。自薦他薦を問わず当時の名女優たちのほとんどが候補に名を連ねました。キャサリン・ヘプバーン、ベティ・デイビス、スーザン・ヘイワード、ジーン・アーサー、ジョーン・フォンテーン、ポーレット・ゴダード・・・。ヴィヴィアンが役をゲットしたのは一種の偶然からでした。不倫関係にあったローレンス・オリビエを追ってアメリカに渡り、撮影所を訪れたところで、スカーレット役に抜擢されたのですから。確かに彼女は生まれながらのスカーレットでした。あのピーンと張りつめた神経がわなわなし出して、切れる寸前っていう演技は彼女ならではのものでした。


レット・バトラーはたくましい野性的な男。人の目を気にすることなく、自分のポリシーをあくまで通す強い人です。でも、包容力があって彼が側にいてくれることによって、深い安心感を得られる人ですね。初めて見たのは小学生の時ですから、バトラー船長は髭のおじさんとしか思えませんでしたが、もうちょっと大きくなって見てみると、良い男です。これが男のあるべき姿ね。スカーレットたちを炎のアトランタから救い出すたくましさ。でも、最後まで送っていってくれなくて、突然軍隊に入るって言い出すんですけれどね。

スカーレットは何故あれほどまでアシュレーにこだわったのかどうしてもわかりません。映画で見る限り、失礼ながらアシュレーはあまり良い男とは言えませぬ。どう考えてもバトラー船長の方が・・・。それなのに、スカーレットは凝りもせずにアシュレー、アシュレー。それじゃ、バトラー船長に愛想を尽かされても文句は言えませんね(笑)。そのアシュレーを演じたレスリー・ハワードは、その後第2次大戦に従軍して戦死してしまいました。その後の世界中に広がった「風~」フィーバーを見ることがなかったのは気の毒です。

メラニーは小学生の時に見たときは天使のような人だと思っていました。今思うに確かに優しい人なんですが、スカーレットに寄せていた盲目的な愛情は一体何だったんでしょう。普通の神経なら自分の夫にモーションをかける女性に優しくなんて出来ないものですが。スカーレットのアシュレーへの思いを気づいていなかったわけではないんでしょうね。それほど鈍感な女性とも思えないけれど。それでも、スカーレットを愛し続けたメラニーの気持ちは全く謎です。自分にはないスカーレットの率直さ、たくましさをうらやむ気があったのでしょうか。でも、本当に強かったのはどちらなのかな。スカーレットは肉体的に、また社会的に強かった。メラニーはひっそり陰に潜んでいても内面的に強かった・・・。


最初にジェラルド・オハラ(スカーレットの父 トーマス・ミッチェル)が、「この世で一番頼りになるのは土地だ。タラの赤い土だ」とスカーレットに言います。スカーレットも戦争での荒廃を目の前に見て、タラの持つ意味を理解し始めます。屋敷は荒れて、きれいなドレスもパーティも、沢山の使用人もいなくなって、愛する母まで亡くしたけれど、土地だけは生きていた。また、再生する力を持っているのです。そのタラに力をもらって、彼女もどんどん再生していく。

結局彼女が一番愛したのはタラだったのでしょう。アシュレーでもなく、バトラー船長でもなく。彼女を生み出し、彼女に生きる力を与えたタラ。「タラに帰ってから考えよう。明日は明日の陽が昇るのだ」。タラの地はまたスカーレットを再生させることでしょう。そしてあくまで彼女はたくましくたくましく生きていくのです。


もうこの映画の製作から80年以上の歳月が流れました。総天然色で当時の制作費が600万ドル。その頃の日本から考えると、夢としか思えない世界だったことでしょう。日本での公開は戦後でしたが、外国で戦前に公開を見た人が「こんなすごい映画を作る国と戦争して勝てるわけがない」と言ったエピソードは有名です。それくらい、国力の差を見せつける映画だったのでしょうね。
 

ところで、私的な思い出ですが、私は小学校5年生の時に、初めてTV放映でこの映画に出会いました。栗原小巻がスカーレットの吹き替えで、放映当日の夕刊のラテ欄下の面が全部この映画の宣伝で埋め尽くされていたことを今でも覚えています。南軍の野戦病院で、スカーレットが兵士の間を歩いているところでした。タラのテーマが素晴らしいというので、カセットに映画自体を録音して、何度も聞きました。だから、「綿を植えましょう!」とか、ところどころの台詞は、今でも突発的に頭に浮かんできます。本屋で、三笠書房の表紙に映画のスティールをあしらった原作3巻が出ていたので、母に買って、とねだったのですが、まだ早すぎると買って貰えませんでした。結果的に原作を読んだのは、中学の時のことです。そして、中学3年の時に、再放映があり、もう放映前からルンルンで、友達に「停電があるかもよ」なんてチャカされていました。再放映も、感動的でした。1982年には、劇場リバイバルがあり、やっと劇場の大画面で見ることが出来ました。それからも、劇場で、TVで、何度見たかわからない作品です。DVDも持っています。今、WOWOWで放映していますよね。

 

原作のマーガレット・ミッチェルは、バトラー船長をクラーク・ゲーブルをイメージして書いたというだけあって、ぴったりです。若くして売れっ子になったミッチェルの次作品を待ち望まれましたが、なんと彼女は交通事故であまりに早い死を遂げてしまいます。それから、ずーっと後、90年代になって、著作権が切れた頃、『スカーレット』という漬物石にしたくなるような長い本が出版されました。アレクサンドル・リプリー著だったかな?ちょっとその辺りは、自信ありませんが、すぐさま買い求めて読んで、内容には色々思うところもありましたが、風~の世界に再び浸かることが出来ました。

 

1965年に『サウンド・オブ・ミュージック』に抜かされるまでは、興行収入1位をずっと続けてきたお化けみたいな映画です。

もし、未見の方がいらしたら、生きている間に是非ご覧ください。損はさせません。

 

トレイラーです。